生産技術の篠田です。
電子部品メーカーで14年、車載パワーモジュールの放熱材の塗布工程を見てきました。
いまでも思い出すのは、量産直前に硬化品を切断したときの断面です。
ギャップフィラーの層に、小さな穴が数珠つなぎに並んでいました。
装置の吐出量は規格内。
混合比も指示どおりでした。
それでも泡は入っていたわけです。
気泡は吐出の瞬間に生まれるものではありません。
材料が容器にある段階から、混ぜるとき、送る途中と、入口はいくつもあります。
今回はその入口を、材料側と設備側に分けて整理します。
泡が入ったまま固まると、何が起きるか
はんだ接合の話にはなりますが、日本溶接協会の接合・溶接技術Q&Aには、パワー半導体モジュールの大面積のはんだ付部には面積率で数%から10%程度のボイドが発生し、それが熱抵抗の増加と信頼性の低下の主原因になっている、と書かれています。
酸化膜を除去できればボイドを1%未満にすることも可能だ、とも書かれています。
泡はゼロが標準ではなく、条件を詰めた分だけ減るものです。
東京大学と富士電機の研究グループが電気学会論文誌A(2014年)に発表したシリコーンゲル封止に関する論文では、脱泡が不完全だとボイドが生じ、それが部分放電を誘発してモジュールの信頼性を制限すると指摘されています。
さらに、金属化パターンの凹んだ縁の部分は脱泡されにくく、ボイドが残りうるとも書かれています。
被着体の形にも、泡の抜けにくい場所ができるということです。
材料側でできること
米国航空宇宙局の作業標準「NASA-STD-8739.1B」は、電子組立への樹脂適用の要求事項をまとめた規格です。
公開されているPDFの8章と12章に、気泡に直結する項目があります。
- フィラーは水分を含まないこと。脱湿には100±10℃で4時間以上のベークが適当(8.3.4)
- 撹拌と混合は、巻き込む空気が最小になるよう慎重に行うこと(8.3.5)
- 封止材は塗布する前に真空脱泡すること(12.1.1)
- 気泡が導体間をつなぐ連続した経路を作ってはならない(12.3.4)
宇宙用の基準をそのまま自社のラインに持ち込むことはできません。
ただ、水分と撹拌と脱泡が必須要件の側に置かれている点は参考になります。
放熱用のギャップフィラーは、熱伝導率を稼ぐためにフィラーを高濃度で詰めています。
その分だけ粘度が高く、いったん抱き込んだ泡は自力ではほとんど浮いてきません。
入れない前提で考えたほうが早い材料です。
設備側でできること
手作業の混合は、巻き込みの入口が多い工程です。
容器の底からすくい上げる動きも、ヘラを引き抜く動きも、空気を連れてきます。
装置による連続混合に切り替えると、この入口自体が減ります。
次に見ておきたいのが、ポンプに泡が入ったときの挙動です。
容積計量方式は、決まった容積を押し出すことで吐出量を保証しています。
その計量室に気泡が入っていると、押した力の一部が泡の圧縮に使われます。
吐出量が減り、2液のうち片方だけずれれば、それはそのまま混合比のずれになります。
装置を選ぶときは、精度や比率と同じ列に「エア抜きのしやすさ」を置くべきだと考えています。
定量吐出ディスペンサ専業のナカリキッドコントロールのνシリーズは、特長に「高粘度液剤でもエア抜きがしやすいポンプ構造」を挙げています。
関西ものづくり新撰2021の紹介ページでは、特許を取得した自動エア抜き機構にも触れられています。
実際の動きは、放熱用2液ギャップフィラーを協働ロボットで扱う計量・混合吐出のデモンストレーションで確認できます。
カタログの数字を眺めるより、材料がどう出てくるかを見たほうが早いです。
まとめ
気泡対策は、材料側と設備側のどちらか片方では完結しません。
- 材料側:水分を抱かせない、混ぜるときに巻き込まない、塗布前に抜いておく
- 設備側:巻き込む工程を減らす、計量室に泡を残さない、抜けやすい構造を選ぶ
硬化後の断面に泡が並んでいても、犯人が最後の工程とは限りません。
容器から被着体までを順番にたどってみてください。
私の場合、原因は材料の受け入れ保管と、手混ぜのひと工程にありました。
最終更新日 2026年9月9日 by llabos