はじめまして、マネーライター兼FPの柴田亮介と申します。
大手損害保険会社に15年ほど勤めたあと、独立して今に至ります。
現在はフリーランスとして、保険や資産運用に関する記事を書いたり、個人向けのマネー相談をお受けしたりしています。
損保の法人営業をやっていた頃、ずっと考えていたことがあります。
「保険って、何も起きなかったら無駄なのか?」という問いです。
答えはもちろんNoです。
何も起きなかったときに「よかった」と思える。
それが保険の本質だと、私は思っています。
資産運用にも同じことが言えるのではないでしょうか。
「増やす」ばかりに目が行きがちですが、「守る」という視点を持つだけで、お金との付き合い方はずいぶん変わります。
最近、マネー相談のお客様からこういう声をよく聞きます。
「NISAで投資信託は始めたけど、それ以外に何をすればいいかわからない」。
「物価が上がっているのは実感しているけど、具体的にどう備えればいいのか」。
今回はそういった方に向けて、元損保マンの視点から「守りの資産運用」について書いてみます。
投資経験の浅い方にも伝わるように心がけますので、気楽にお付き合いください。
目次
「攻め」と「守り」、資産運用には2つの顔がある
資産運用と聞くと、多くの方が「お金を増やすこと」をイメージします。
株式投資やFX、投資信託でリターンを狙う。
NISAやiDeCoを活用して効率的に資産を増やしていく。
こうした「攻めの運用」はもちろん大事です。
私自身もNISA口座でインデックスファンドを積み立てていますし、否定する気はまったくありません。
ただ、それだけでは片手落ちだと私は考えています。
損保時代に学んだことの一つが「リスクは分散させないと意味がない」ということでした。
火災保険だけ入っていても、地震で全壊したらカバーされない。
同じように、攻めの運用だけ充実させても、守りがなければ一方的にやられる局面が来ます。
資産運用にはもう一つの顔があります。
「守りの運用」、つまりインフレや円安、経済の混乱から自分の資産を守るという発想です。
攻めと守り、両方あって初めて資産運用は完成する。
サッカーと同じで、点を取ることばかり考えて守備をおろそかにしたら、試合には勝てません。
預貯金だけでは資産が「目減り」する時代
「うちは投資なんてしないから関係ない」という方もいらっしゃるかもしれません。
でも実は、何もしないこと自体がリスクになる時代に入っています。
総務省統計局の消費者物価指数によると、2026年3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比+1.8%でした。
過去5年間で日本の物価はおよそ12%上昇しています。
つまり、5年前に100万円で買えたものが、今は112万円出さないと手に入らない。
銀行の普通預金金利は依然として微々たるものですから、預貯金の実質的な価値は確実に目減りしています。
さらに、為替の円安も見逃せません。
2026年前半も1ドル=140〜160円台で推移しており、輸入品の価格上昇を通じて生活コストを押し上げています。
「何もしない」は安全ではなく、ゆるやかに資産が削られていく状態です。
この事実を、まず知っておいていただきたいと思います。
損保時代の上司がよく言っていました。
「リスクは見えないから怖いんじゃない。見えているのに放置するから怖いんだ」と。
インフレによる資産の目減りは、まさに「見えているリスク」です。
「守り」の資産運用、何がある?
では具体的に「守りの運用」にはどんな選択肢があるのか。
代表的なものを整理してみます。
| 資産クラス | 特徴 | インフレ耐性 | 始めやすさ |
|---|---|---|---|
| 外貨建て資産(米ドル預金・外貨建てMMFなど) | 円安局面で為替差益が期待できる | ○ | ○ |
| 不動産(実物・REIT) | 家賃収入があり、物価上昇に連動しやすい | ◎ | △(実物は高額) |
| 金・プラチナなどの貴金属 | 実物資産で信用リスクなし、世界共通の価値 | ◎ | ○ |
| 物価連動国債 | 元本がCPIに連動して増減する | ◎ | ○ |
どれか一つに絞る必要はありません。
自分の状況に合わせて組み合わせることで、守りの層を厚くできます。
外貨建て資産は円安への備えとしてはわかりやすい選択肢です。
ただし為替が円高に振れれば元本割れのリスクがあり、「守り」としては少しクセがあります。
不動産は物価上昇に強い資産の代表格ですが、実物を買うには数千万円単位の資金が必要です。
REITなら少額で始められますが、株式市場の影響を受けやすいため「守り一本」とは言いにくい面もあります。
物価連動国債は仕組みとしては面白いものの、個人向けの購入枠が限られている上に、デフレ局面では元本が減るリスクもあります。
このなかでも、私が特に注目しているのが「金」です。
理由はシンプルで、金には「発行体が存在しない」という他にはない特徴があるからです。
なぜ金は「守り」の資産として評価されるのか
株式は企業が、債券は国や企業が発行しています。
つまり発行体が破綻すれば、その価値はゼロになりかねません。
一方、金は誰かが発行した資産ではありません。
鉱山から採掘された「モノ」そのものです。
だから企業の倒産も、国家のデフォルトも、金の価値には直接影響しません。
World Gold Council(ワールド・ゴールド・カウンシル)のデータによると、過去4年間で各国の中央銀行は年平均1,000トンもの金を積み増しています。
各国の中央銀行が外貨準備の一部を金で持つ動きは、2026年現在も加速中です。
金は5,000年以上にわたって人類が価値を認めてきた資産で、歴史上一度も無価値になったことがありません。
戦争や経済危機のたびに「有事の金」として買われてきた実績がある。
「守りの資産」として、これほど長いトラックレコードを持つ資産は他にないでしょう。
もう一つ、金には株式や債券との相関性が低いという性質があります。
株が大きく下がったとき、金は逆に値上がりすることが珍しくありません。
ポートフォリオに金を加えることで、全体の値動きのブレを抑える効果が期待できます。
これは「分散投資」の教科書的なメリットです。
ちなみに2025年から2026年にかけて、金の国内小売価格は1グラムあたり29,000円台を突破して史上最高値を更新しました。
三菱UFJ銀行の2026年金市場レポートでも、中央銀行やファンド投資家からの構造的な需要が続く見通しが示されています。
「今から買うと高値づかみにならないか」と心配される方もいるかもしれません。
その不安はよくわかります。
ただ、金を短期売買の対象として見ると「高い・安い」が気になりますが、長期の資産防衛として考えるなら、タイミングよりも「持っているかどうか」のほうが重要です。
損保時代にお客様によく言っていたことがあります。
「保険は事故が起きてからでは入れません」。
金も同じで、有事が起きてから買おうとしても、そのときにはもう価格が跳ね上がっています。
純金積立という選択肢
「金に興味はあるけど、まとまったお金で金の延べ棒を買うのはハードルが高い」
そう感じる方に知っていただきたいのが「純金積立」という仕組みです。
純金積立は、毎月一定額を積み立てて少しずつ金を購入していく方法です。
金の延べ棒を一括で買うと数百万円の出費になりますが、積立なら月々の負担を抑えて少しずつ金を蓄えていけます。
一般的には「ドルコスト平均法」といって、金価格が高い月は少なく、安い月は多く購入する仕組みが主流です。
価格変動のリスクを分散できるので、投資初心者にも始めやすいと言われています。
一方で、最近は「確定型」と呼ばれる積立方式も出てきています。
契約時に購入価格を確定させて、あとは月々の支払いで積み立てていくというものです。
「何年後にどれだけの金が手元に届くか」が最初にわかるので、ライフプランが立てやすいのが特徴です。
ドルコスト平均法と確定型、どちらが良い悪いではありません。
「価格変動リスクをならしたい人」にはドルコスト平均法が、「先の見通しを明確にしたい人」には確定型が向いています。
自分の性格や目的に合ったほうを選べばいい、というのが私の考えです。
純金積立のメリットとデメリットをまとめておきます。
- 少額から始められるので、まとまった元手がなくてもOK
- 保管場所を心配しなくていい(運営会社が管理してくれる)
- 株式や債券とは値動きの方向が違うので、分散効果がある
- 一方で配当や利息は出ないため、保有しているだけでは収入にならない
- 手数料やスプレッド(売買価格の差)がかかる
- もちろん価格が下がるリスクもゼロではない
どんな資産運用にもメリットとデメリットはあります。
大事なのは「自分の目的に合っているかどうか」です。
値上がり益を積極的に狙いたいなら株式、資産を守りたいなら金や不動産。
目的が違えば、選ぶ手段も変わります。
まずは自分が「攻め」と「守り」のどちらに重心を置きたいのかを考えるところから始めてみてください。
純金積立の仕組みを動画でわかりやすく解説しているチャンネルもあります。
たとえば株式会社ゴールドリンクのYouTubeチャンネルでは、純金積立のメリットやサービスの仕組みを短い動画で紹介しています。
テキストで読むより映像で見たほうがわかりやすいという方は、一度チェックしてみてください。
純金積立の全体像をざっくりつかむのに、ちょうどいい長さの動画がそろっています。
損保マンが見た「保険と金の共通点」
少し個人的な話をさせてください。
損害保険の営業をしていた頃、法人のお客様によくこう聞かれました。
「保険って、結局使わなかったらもったいないですよね?」
そのたびに私はこう答えていました。
「使わなかったということは、何事もなかったということです。それが一番いいんですよ」と。
金も同じだと思っています。
「金を持っていたけど、結局インフレもそこまでひどくならなかったし、有事も起きなかった」。
それなら最高の結果です。
でも、もしインフレが加速したら。
もし円が急落したら。
もし世界経済が大きく揺れたら。
そのとき、金を持っている人と持っていない人では、精神的な余裕がまったく違います。
保険と同じで、「備えがある」という安心感は数字に換算できません。
実際に私も40歳で独立したとき、会社員時代の退職金の一部を純金積立に回しました。
正直に言えば、当時は半信半疑でした。
でも今振り返ると、あのとき始めておいてよかったと心から思っています。
株式市場が荒れたとき、金がポートフォリオの中で安定してくれている。
それだけで、夜ぐっすり眠れます。
地味な話ですが、資産運用で「安心して眠れるかどうか」は意外と大事なポイントです。
ポートフォリオ全体のうち、10〜15%くらいを金で持っておく。
それだけで「守り」の層はぐっと厚くなります。
具体的に言えば、金融資産が1,000万円ある方なら100〜150万円分。
純金積立を使えば毎月少しずつ積み上げていけるので、いきなり大きな金額を動かす必要はありません。
FPとしてのアドバイスは、派手ではありませんがこれに尽きます。
「攻め」で夢を見て、「守り」で安心を確保する。
その両方を持っている人は、どんな経済環境になっても慌てずに済みます。
まとめ
資産運用というと「どれだけ増えるか」が話題の中心になりがちです。
でも元損保マンの私からすると、「どうやって守るか」も同じくらい考えてほしいテーマです。
この記事でお伝えしたかったことを振り返ります。
- インフレが続く今、預貯金だけでは資産の実質的な価値が目減りしていく
- 「守りの資産運用」には外貨、不動産、金など複数の選択肢がある
- 金は発行体が存在しない唯一無二の実物資産で、5,000年の歴史がある
- 純金積立を使えば、少額からコツコツと金を積み上げていける
- ポートフォリオの10〜15%を金に振り向けるだけで、守りの層は大きく変わる
「何もしないリスク」を認識すること。
これが守りの資産運用の第一歩です。
攻めの運用で資産を育てながら、守りの運用で資産を守る。
その両輪がそろったとき、お金との付き合い方はぐっと安定します。
15年間の損保営業で一つ確信していることがあります。
「備えは、早すぎるということがない」。
まずは「守りの発想」を知るところから始めてみてください。
最終更新日 2026年6月17日 by llabos